モンゴルの経済、外務省の資料とJICA調査レポート引用
モンゴルの経済・産業、物価、投資、貿易等の動向
2.1. モンゴルの経済・産業動向
モンゴルは鉱物資源に恵まれており、近年、大変注目されている。鉱物資源の輸出の太宗を占 めるのは石炭、銅、及び鉄鉱石で、モンゴルの南部に世界有数の銅・金鉱山のオユトルゴイ(Oyu Tolgoi、以下OT)鉱山がある。また、未開発石炭鉱山では世界第一の規模を誇るタバントルゴイ (Tavan Tolgoi、以下TT)鉱山や、その他にも多くの中小鉱山が開発中である。 モンゴル経済は、輸出の約90%近くを占める鉱物資源分野の活況をエンジンとし、現在、急速 な成長を示している。OT、TT の巨大二鉱山の開発が始まり、2013 年からの鉱物資源輸出の急増 に伴う、外資の流入やインフラ整備の促進が予想されている。これらを背景に、種々のサプライ 品や、建築・運輸・サービス部門の需要が急増し好循環過程に入っている。 鉱山部門が牽引役となり、モンゴル経済は、中期的に大きく飛躍する時期に来ている。モンゴ ル政府は、一人当たりGDP が2011 年の2,500 ドルから2016 年には12,500 ドルに急増すると 予想している。GDP は、2011 年に17.5%(図表2.1.1 参照)、2012 年第1 四半期は16.5%の高 成長を実現したが、第2 四半期は西欧の経済危機に端を発する国際経済不安、中国経済の減速も あって11.0%と減速した。 鉱物資源開発に伴う輸入の増加もあり、経常収支の赤字幅が拡大しているが、海外資本の流入 により資金が供給されている。現在、トゥグルグとドルの為替は、トゥグルグが弱含みで推移し ており、外貨準備高も減少基調に入っているが、一時的なもので、2013 年から予定通りにOT の 輸出が開始されれば、国際収支の問題は解決されると予想される。鉱物資源輸出が好調になれば 政府の財政収入が大きく膨らむ構造になっている。モンゴル政府は、この収入の一部をインフラ 建設、社会福祉に振り分ける政策を採用している。中期的に膨らむ財政収入の管理のため、政府 は2013 年から財政安定化法を実施する予定になっている。 モンゴル経済の大きな課題は鉄道、道路、電気等のインフラの建設を促進することであり、鉱 物資源を開発するには、発電所と送電線、鉱石を運搬するための鉄道建設、道路建設が必要であ る。巨大鉱山があるモンゴルの南部では、新たな街作りが行われている。 モンゴル経済の構造は、外需が50%を占めており、輸出の殆どは地下資源、石炭、銅、鉄鉱石 等で、その主な輸出先は中国である。中国経済が堅調に推移する限り、モンゴル資源の中国輸出 は安定的に推移するものの、最近の国際経済の停滞から資源価格は下落しており、今後の国際価 格の推移にも注視する必要がある。ロンドン金属取引所(London Metal Exchange、LME)によ ると、石炭価格は2008 年7 月の200 ドルから2012 年12 月には100 ドルと半減し、又、銅の価 格も2011 年2 月の10,000 ドルから2012 年8 月には7,500 ドルと下落している。 モンゴル経済に関する懸念材料の一つは、リオティント社(Rio Tinto)とモンゴル政府との OT 投資協定にかかる改定交渉の帰趨である。モンゴル政府は、リオティント社と再度、投資安定 協定の見直し協議を求めているが、リオティント社側はこれを認められないとして、膠着状態に なっている。この動きが解決しない場合、2013 年開始のOT 鉱山の生産予定がずれ込み、モンゴ ル経済の先行き及び外国投資の流入に大きな影響を及ぼす恐れがある。 国内経済ではインフレが大きな問題となっており、今年に入っても年率15%程度で高止まりし ている。公務員給与の引き上げや住宅不足、食肉価格の高騰等の供給面の問題及び、モンゴル銀 行(Bank of Mongolia)による通貨の流動性を促進させる政策等の結果と考えられる。最近、盛 況であった建設業界においても、政府の建設業者に対する査察の実施やそれに伴う建設中止命令 の結果、80件弱の建築実施が中止状態にあると言われている。当然、これらは経済活動にマイナ スの影響を与えている。モンゴルの経済
1.主要産業
鉱業,牧畜業,流通業,軽工業
2.名目GDP
11,516.4百万米ドル(2013年,世界銀行)
3.一人当たりGDP
3,770米ドル(2013年,世界銀行)
4.経済成長率
11.7%(2013年,NSO)
5.インフレ率
12.5%(2013年,NSO)
6.失業率
約7.9%(2013年,NSO)
7.貿易総額
10,626.9百万米ドル(収支:約-2,088.7百万米ドル)(2013年,NSO)
- (1)輸出 約4,269.1百万米ドル
- (2)輸入 約6,357.8百万米ドル
8.主要貿易品目
- (1)輸出 鉱物資源(石炭,銅精鉱,鉄鉱石,蛍石),原油,牧畜産品(カシミア,皮革)
- (2)輸入 石油燃料,自動車,機械設備類,日用雑貨,医薬品
9.外貨準備高
1,193百万米ドル(2013年末時点,NSO)
10.主要貿易相手国(上位5か国)
- (1)輸出 中国,イギリス,カナダ,ロシア,ドイツ
- (2)輸入 中国,ロシア,アメリカ,韓国,日本
(2013年,NSO)
11.通貨
トグログ(MNT)
12.為替レート
1米ドル=1,525.72トグログ(2013年平均,NSO)
13.2013年度国家予算
- 収支 約2,504億トグログ(約164百万米ドル)の赤字(2013年,NSO)
- 歳入 約5兆9,276億トグログ(約3,544百万米ドル)
- 歳出 約6兆1,780億トグログ(約3,723百万米ドル)
14.経済概況
民主化以降,日本を始めとする各国や国際機関の指導,助言及び支援により市場経済化に向けた構造改革を推進し,1994年に初めてプラス成長に転じた。その後も順調に経済が発展してきたが,2008年,世界的な金融・経済危機の影響を受け,2009年にはマイナス成長となった(-1.3%)。その後,2010年に入り,鉱物資源分野の順調な発展に加え,鉱物資源の国際相場の回復が内需の拡大を後押ししたことにより,2010年の経済成長率は6.4%,2011年には17.3%とV字回復を果たした。一方,経済分野における諸問題として,(1)中・露両隣国に過度に依存した経済(モンゴルの輸出全体の9割は対中国。石油燃料のほぼ100%はロシアからの輸入に依存。)(2)インフレ率高騰の懸念(3)格差の拡大などに対する懸念が挙げられる。特に,資源ナショナリズムの台頭及び外資規制の結果としての外国直接投資の大幅な減少や,資源価格の低迷等により,国際収支が悪化し,モンゴルの経済は厳しい局面を迎えている。
経済協力
1.我が国の援助実績
- (1)円借款 890.94億円(2013年度まで)
- (2)無償資金協力 1055.08億円(2013年度まで)
- (3)技術協力 441.34億円(2013年度まで)
2.主要援助国・機関
日本,米国,ドイツ,世銀,IMF,ADB等。
3.その他
モンゴルは,中国とロシアに挟まれ,地政学的に重要な位置を占める。同国の民主主義国家としての成長は,我が国の安全保障及び経済的繁栄と深く関連している北東アジア地域の平和と安定に資する。また,同国は石炭,銅,ウラン,レアメタル,レアアース等の豊富な地下資源に恵まれており,我が国への資源やエネルギーの安定的供給確保の観点からも重要。我が国は,世銀との共同議長の下,1991年9月の第1回から,1997年10月の第6回までモンゴル支援国会合を東京にて開催した他,国際舞台においても積極的に対モンゴル支援のイニシアティブを発揮している。2012年4月策定の対モンゴル国別援助方針においては,大目標を持続可能な経済成長を通じた貧困削減への自助努力支援とし,3分野を重点としている((1)鉱物資源の持続可能な開発とガバナンスの強化,(2)全ての人々が恩恵を受ける成長の実現に向けた支援,(3)ウランバートル都市機能強化)。
2.日本とモンゴルの経済関係
- (1)貿易(財務省貿易統計)
- (ア)貿易額(2013年)約311.98億円(収支:日本側が274.46億円の黒字)
- モンゴル→日本 約18.61億円
- 日本→モンゴル 約293.04億円
- (イ)主要品目
- モンゴル→日本 鉱物資源(石炭,蛍石),繊維製品,一般機械
- 日本→モンゴル 自動車,一般機械,建設・鉱山用機械
- (2)我が国からの直接投資 累計206.93百万ドル(2013年9月現在,モンゴル外国投資庁)
- (3)日・モンゴル経済連携協定(EPA)交渉は,2012年6月以降7回開催され,2014年7月に大筋合意に至り,2015年2月に署名となった。
- (4)本邦企業の支店開設数:支店0社,駐在出張所31社(2013年10月現在)
- 現地法人化した企業等数:194社(2012年10月現在)
3.在留邦人数
420名(2013年10月現在)
4.モンゴル国籍の外国人登録者数
5,180名(2013年12月現在)
5.要人往来(立寄りは除く)
年月 | 要人名 |
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1989年5月 | 宇野外務大臣 |
1991年8月 | 海部総理大臣,中山外務大臣 |
1992年5月 | 長田参議院議長 |
1997年8月 | 小泉厚生大臣 |
1999年7月 | 小渕総理大臣,野田自治大臣,高村外務大臣,野田郵政大臣 |
2002年6月 | 秋篠宮同妃両殿下 |
2004年8月 | 川口外務大臣 |
2006年7月 | 中川農林水産大臣 |
2006年8月 | 小泉総理大臣 |
2006年9月 | 額賀防衛庁長官 |
2007年7月 | 皇太子殿下 |
2010年8月 | 岡田外務大臣 |
2011年1月 | 玄葉国家戦略担当大臣 |
2012年1月 | 一川防衛大臣 |
2013年3月 | 安倍内閣総理大臣 |
2013年7月 | 古屋国務大臣 |
2014年4月 | 太田国土交通大臣 |
年月 | 要人名 |
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1998年5月 | バガバンディ大統領(実務訪問賓客) |
1999年3月 | ゴンチグドルジ国家大会議議長(衆議院招待) |
1999年5月 | トヤー対外関係相(外務省招待) |
2000年9月 | エルデネチョローン外相 |
2001年2月 | エンフバヤル首相(実務訪問賓客) |
2002年2月 | トゥムルオチル国家大会議議長(参議院招待) |
2002年7月 | エルデネチョローン外相(外務省賓客) |
2003年11月 | エンフバヤル首相(支援国会合出席) |
2003年12月 | ハガバンディ大統領(公式実務訪問賓客) |
2005年3月 | ムンフオルギル外相 |
2006年3月 | エンフボルド首相(実務訪問賓客) |
2007年2月 | エンフバヤル大統領(公式実務訪問賓客) |
2008年2月 | ルンデージャンツァン国家大会議議長(参議院招待) |
2008年3月 | オヨーン外相(外務省賓客) |
2009年4月 | バトボルド外交・貿易相 |
2009年7月 | バヤル首相(実務訪問賓客) |
2009年12月 | ザンダンシャタル外交・貿易相 |
2010年10月 | バトボルド首相 |
2010年11月 | エルベグドルジ大統領(公式実務訪問賓客) |
2011年12月 | デンベレル国家大会議議長(参議院招待) |
2012年3月 | バトボルド首相(実務訪問賓客) |
2012年9月 | ボルド外相(外務省賓客) |
2013年6月 | ボルド外相 |
2013年9月 | アルタンホヤグ首相(公式実務訪問賓客) |
2013年9月 | エルベグドルジ大統領 |
2014年2月 | ボルド外相 |
2014年4月 | エルベグドルジ大統領 |
2014年7月 | エルベグドルジ大統領 |
2015年2月 | サイハンビレグ首相 |
2015年2月 | エンフボルド国家大会議議長(衆議院招へい) |
6.二国間条約・取極
- 外交関係樹立(1972年2月24日)
- 文化交流取極(1974年)
- 経済協力協定(1977年)(カシミア工場建設)
- 貿易協定(1990年3月1日)
- 青年海外協力隊派遣取極(1991年3月26日)
- 航空協定(1993年11月25日署名)
- 投資保護協定(2001年2月15日署名)
- 技術協力協定(2003年12月4日署名)